工芸品の値段について

●大きくても小さくても似たような値段の不思議

たまにお客様から聞かれることが『工芸品の値段はよく分からない』ということ。

 

例えば、サイズの大小の差ほど値段の差が無いことも多いので、小さいのにこの値段?!と不思議に感じるようです。でも、作った本人に不躾に聞くのは気が引けて、聞けずにわだかまった疑問を私に問う感じ。

工業製品と違って、手工芸の製品は、作るものの大小で手間が変わらない場合は、同じ様な値段になります。手工芸品は、工業製品ほど「大量」ではないので、スケールメリットは大してないと思っていいです。

 

それに、靴のようなもので、足に合わないサイズは履く価値が無い=買う価値がありません。欲しい方の仕様にぴったりで、値段が見合うものなら、欲しい方は満足してお買い上げくださいます。

 

そして、ほとんどの職人さんは、稼ぎ下手なので、値付けが甘いです。自分が制作または製作に掛けた時間100%を価格に乗せている職人は皆無です。買ってくれる方のお財布事情ありきですから、その方の顧客層が買える価格帯で値段をつけているというのが実情だと思います。

 

だからこそ、欲しくて買う側も「これがこの値段なら買わないと損!」と心を決められる訳です。

 

そう聞くと、価格転嫁できていない弱小事業に聞こえますが、それなりに看板を背負ってやっている職人さんは、ちゃんとファンがついてくるし、価値を分かってくれるお客様と長くお付き合いする関係の中で、ちゃんと収入を得られています。

 

お客様の側が目が肥えて職人の作るものにより高い価値を見出すようになっていくということもありますし、作る側の成長進歩もありますし、相乗効果で成り立っていくようなビジネスモデルなんだと私は認識しております。

 

半端なく時間をかけて築いていく仕事。

技術の向上、顧客との人間関係、業界でのお付き合い、などなど、連続と継続が基本の職人仕事を思うと、誰でも気軽になれる世界ではないなと思います(転職3回のわたくし、不連続の人生★

 

ということで、目の前の品物を見て、何故と思ううちは、その品物は自分に合っていないものだと判じて、買わないで正解なんだと思いますよ。

 

手工芸品は、本心自分にピッタリと思えるもの、欲しいと思えるものを買って、長く大事に扱っていただけるといいなと思います。