木原敏江氏の漫画で、摩利と慎吾よりも中二心に刺さった漫画「アンジェリク」も読み返してみました。
ルイ14世時代のフランスが舞台で、宝塚の舞台にもなったアンジェリク。
時代背景も知らないままに読んだ中学の頃、華やかなドレスや縦ロールの巻き髪、羽根飾りなど華やかさにくぎ付けでした。
朝の連ドラみたいに、テンポよく事態が動き、事件が起きて、恋はすれ違う。宮廷ならではの陰謀に翻弄されたり、運命のいたずらもありで、山谷起伏が息をつかせない連続だった記憶。
40年振りに読み返したら、何だか当時感じたようなわくわく感が皆無で、この世界感からはとっくに卒業していた模様。神の目線で起こる悲喜を淡々と眺めている自分。ただ、その事が、自分的にはいいことに思えて、寂しくはありませんでした。
絵面は、褪せることなく、超絶華やかで美麗でした。
中二的にお気に入りだった設定は、借金のかたにジョフレの嫁になると思わせておいて、実はジョフレは7年前からアンジェリクを見そめて、折々成長を見守りながら機を待っていた、というところ。
王家よりも古い家柄、名門ながら、権威主義なところがなく、公正でリベラルな思想の持ち主のジョフレ。内乱で怪我をし、足が不自由で顔に傷があるとしても、それが気にならないほど優雅な立ち居振舞い、存在感。
男子なのに傷ものって言い方もアレですが、その傷に負けてない。未来をみつめて広い見識を深め、経済的にも政治的にもしっかりした考え。
王子様みたいな人から認められ、選ばれるなんて、承認欲求満たされたい夢見る少女にはよく刺さる設定(笑
選ばれたアンジェリクは明るく素直で裏表が無い。体は健康で行動は闊達。守りたい人が居て、そのためには自己犠牲もいとわない情の深さと優しさ、譲れないものを守ろうとする強さもあります。
といって、やってる事は年相応の子供っぽさで感情的なところもあり、取り巻く男性はことごとく振り回されてえらい目に合っているように見えます。
そも、アンジェリクを取り巻く男性は、皆さん愛の盲目で、大人の損得勘定が働かなくなるバグを、無くしたくないと大事に抱えているかのようでした。アンジェリクを守ろうと自分がピンチに陥り、フィリップに至っては自ら死地に向かい死亡(ひどいw
今のわたくしは、そんな犠牲を良しとしない感性が強くて、感情移入出来なくなっておりました。原作小説が扱う時代の価値観をすっとばしたら内容が誤認されるとは理解しています。それよりも、今の自分が誰かを巻き込んで犠牲にしてまで幸せになりたくはないと思うようになったことが分かりまして、その方向性は間違っていないと感じるので、感動できなくても仕方ないかなーと思った次第。
婚約者のジョフレが死刑になり、二コラにかくまわれるうちにほだされ結婚し、ルイ14世の命令で今度は初恋の王子様的存在フィリップと結婚。
総受けという用語は、当時は無かったと思うのですが、まさに絵に描いたような総受けっぷりがまた、承認欲求満たされたい夢見る少女にはよく刺さる設定(笑
話の流れとしては、ルイ14世が愛人として召し上げるために、言う事をきくフィリップの嫁にした訳ですが、フィリップの恋心も分かっている読者的には、フィリップの初恋成就/アンジェリクの初恋成就でおめでたいイベントとしてデレるところ。
この原作者は、ファンサービスも旺盛だったんだろうなとつくづく思いました。
テンプレートとしての「フィリップ」的キャラクターは、当時耽美系キャラとしてはもてはやされたもので、どこか世間離れしたところがある美貌の天才で、生い立ちは不幸で影のあるところがまたかわいそうで「私なら優しくしてあげられるのに~」とみんなで入れ込んでいたものです。
破滅的な予感しかしない美形には、頼ってくれたらちゃんと受け止める気満々の保護者的キャラがより添うもので、「ボーフォール公」というイケおじが愛人関係を結ぶことを条件に、フィリップを気づかい、時に導きながら静かに愛着していく立ち位置も当時人気だったテンプレート。
中学生のわたくしは、こんな風に守って甘やかして大事にしてくれる「権威あるお金持ち」な存在にも憧れていたな・・・夢が夢杉で恥ずかしいぐらいです(笑
大人になってみたら、甘やかされて守られていたら、失敗も恐れずに新しい事を試していける訳でもなく、逆に怠け者になってしまう自分の性さがに気付きました。
今回読み返して好きになった場面は、愛するフィリップに死なれたボーフォール公と、愛するアンジェリクが旅立ってしまったニコラが、思い出話をしているシーン。
正直、ボーフォール公と二コラの記憶が交わるところは皆無だから、互いが自分の思い出に浸っているだけかもしれないのですが、それでも、救われる関係ってこんな感じだよなと思うのです。
ただ話を聞いてあげるだけで、結論も解決もないけれど、救われる人って案外多いです。それは当店でのやり取りの中で実感しておりますから。
私はこれからの10年は、こういう相手として存在していくお役目を少しだけ強化していけたらなと思って眺めたラストシーンです。
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