私が開業した頃は、店員にあれこれと説明されるのがうざい、放っといて欲しいという風潮がありました。百貨店のような丁寧な接客が売りの店でさえ、張り付いてくる店員がストレスフルだのと評判悪かったものです。
店員を面倒な言葉を交わさずに買い物が出来る店が望まれているということで、「読ませて接客ゼロ、店と客がwin-win、POPを書け!ブログを書け!」的なビジネス本がたくさん出ていた記憶。派生で、手書きが温かみあがるとなれば、筆文字POPの書き方みたいなものまであった気がします。
(POPの書き方セミナー、筆文字メニューの書き方セミナーと、どんなことでもお金儲けの種に出来る人々に逞しさを感じたものです。あの頃、ああいったセミナーで稼いでいた方は、今もやってらっしゃるかしら…笑)
私もまだアラフォーで、感覚的にはそっち側だったから自分の店もそうあるべき、と思って見ておりました。
ところが、開業してみたら、江古田の皆さんは真逆で、よく知らないと良さも分からないとばかりに、お客様の方からあれこれと聞いてくるので会話するのが当たり前で、開業前のアレは何だったんだ、ぐらいのギャップ感。
「ごめんください~」→昭和な挨拶、久し振りに聞いたかも、死語かと思ってた、、、
「ちょっと見せてくださいね~」もう、嬉しくて「はいどうぞ!いらっしゃいませ!」
これが、中高年だけでなく20代30代もぱらぱらと使う方がいて、凄く救われたものです。
想像してみてください。
黙ってやってきて、黙って店内ぐるぐる歩き回り、黙って品物を触ったり、感情も見えないまま黙って帰っていく人…そんな方と空間を共有している間の私の緊張感(苦笑)そういうのを予想していたら、いい意味で裏切られ「見せてください」って笑顔でやって来られると、こちらも精一杯接客して差し上げたくなるじゃありませんか。
江古田で開業して、本当に良かったと思ったものです。
ところで、「見せてください」と似た言葉で「見るだけだけどいいですか?」と言いながら入ってくる方がたまにやって来ます。聞くたびに、微妙な心持ちになる嫌な言葉。
「買う気は無いが見たいので見せて」と私には聞こえるもので「そんなの嫌です、絶対ダメです」と言いたい(笑
だがしかし、言いたくても言える関係性ではないので「いいですよ」と肯定するしかないのです。
私の妄想では、「見せてください」はいい表現だなと思ったので真似してみたが、間違って本音だだもれな言葉使いとなり「見るだけ」が生まれたのではないかと思っております。残念ながら、お店側からすれば「この人と接する価値はあるのか?」と身構えさせる言葉使い。小売店はモノを売って儲けないと食べていけないお商売なのに、それを否定されるようなその言葉、呪いの言葉のようじゃないですか。
「見せてください」の方だって、本音では買う気が無い可能性大なんです。
買わないかもしれないという余白を残しながら、こちらへの興味を伝えているから、高度な言葉使いだと思います。
だって買うかどうか見て見ないと分からない、だから見るだけって何が悪いのと言われそうですが、
本音はいつでも、どこでも、何度でも、垂れ流していると人間関係の摩擦となります。だから大人は人を選んで本音と建て前を使い分けるのです。
飲食店の友達に「食べる気ない人はまず来ないから羨ましい」と言えば、
美容室や整体の友達に「予約商売ってサービス受けたい人しか来ないからいいな」と言えば、
「来て欲しい人や来て欲しい数が来る訳でもないんだから、おんなじだよ」と笑われます。
お商売に限らず、小売店にとっての「見るだけ」に相当する言葉使いでモヤッとする場面はあると思います。
みんながどこかで誰かに「言わなくてもいい言葉」を投げたり、投げられたりして、ちょっとずつ不愉快を貯めてるのはよろしくないと思います(爆発、キケンw
自分の言葉使いに少し気を付けること。
それで周りの人が気分よくひと時過ごせるなら、そこを頑張ってもいいと思います。
若い時は出会いも多いし、周りの人間関係が学校、仕事、趣味、などなど、チャンネル豊富なうちは、相手から刺激を受けたり、試行錯誤もするから自然と変化・改善されていく気がします。問題は、中高年。人間関係が固定化されて、新しいインプットが減ると、変化のきっかけが減りますからね。私も、50代半ばに差し掛かりましたから、気をつけないとなと思う今日この頃。
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