気に食わなくても事実は事実

7/10金曜日、梅雨空で店頭が人類滅亡、暇なものでYouTubeで動画をみていたら、虎ノ門ニュースで引っ掛かる話を耳にしました。その日は武田邦彦氏と須田慎一郎氏の担当日。


私は武田邦彦氏の言説は、時として一般の理解を超える時があり、『とんでも学者』と言われたりもしておりますが、内容を文字面だけ、先入観なしで見れば、なるほどごもっともなご意見も多い方だと思っております。

対立意見者が目の前にいても、『感情的に』大声でかぶせるように対立意見をつぶしに掛かる事は無いし、相手の話が理屈として成り立っているなら認めるし、自分の非に気付けば認めて謝るし、非常に公正な方だなと尊敬しております。私には武田氏のような対応はやりたくても感情に負けて、出来ません。

その武田氏が、『香港は元々中国の領土だったので、中国が自国の領土を取り戻し、国として統一しようとしていることは責めるべき事ではない、何が悪いんだ、当然の事をしているだけ(意訳)』と言うので、心がざわついて続きを聞きました。

私は、今の香港情勢を気に掛け、憂慮しております。民主主義や自由主義で暮らしてきた香港人が、共産主義の横暴や恐怖に、声をあげて行動し続けていることを注目しており、中国の非道を責める論調に賛同してきました。

私の中では共産主義は、自分至上主義、ドラえもんのジャイアン、個人の価値観を踏みにじり自分の価値観を押し付ける迷惑な思想としか思えず、世の中で一番人を殺してきた権力は共産主義と言われるたびに、日本は民主主義で良かったなとしみじみ思います。個人の権利、人権が認められており、大事にされる国です。

 

私はひと頃中国で駐在員として働いておりました。その頃は、中国は刺激的で面白い国だと思い、何だか閉塞感が漂う日本よりも、このまま中国で働けたらいいなと思うぐらい、中国が良い国に見えていたことがあります。中国人個人個人はどの方もとてもいい人で、日本人と同様、義理人情もあるし、頭もいいし、付き合って楽しい人が多かったです。

 

日本に戻って随分経ち、中国に対する妙なあこがれが褪せて目が覚めてみたら、国としての中国は、覇権主義が著しく、世界協調を乱しているように見えて仕方がありません。

 

なので、イギリスが海外市民旅券を持つ香港人がイギリス国内に滞在できるように、いずれは、市民権を獲得できるように検討というニュースを聞いた時に、『宗主国』イギリス頑張れ!と拍手喝采の気分でした。

武田氏は、そのイギリスが、元々どうやって香港を中国から奪ったのか、歴史的経緯を見れば、強奪に等しいという「事実」を思い出せというのです。

 

教科書で習ったアヘン戦争。
イギリスが、中国がどうやっても勝てないような武力差の戦争をふっかけ、中国人を蹂躙し殺害し、戦勝国として莫大な賠償請求と香港の割譲を求め、奪い取られたのは「事実」武力差をかさに着て、イギリスは侵略した訳ですから、「宗主様頑張れ!」なんて確かに言うべき事ではないなとハッとしました。

香港返還は、イギリスも国力が落ちていた時で返す理由が裏にはあったと聞いています。そこで50年はこのままで、なんて注文をされて「何を言ってやがる」と思っていたのは想像に難くありません。


でも、心の中では、昔と事情が違うんだから、香港が中国になりたくない、香港のままでいたいと言っているのに、何を言うのやら?と反発する感情も湧きます。

 

武田氏は、好ましくない事実であろうとも、遡って歴史という経緯を認識しないと、判断を誤ると言います。敵味方、好き嫌いで判断すると、Aの侵略はいい侵略、Bの侵略は悪い侵略と、侵略自体はどっちも悪なのに、判断を間違うというのです。

分かりやすさや、受け入れやすさを求めがちですが、世の中は利害が複雑系、絡み合っているし、人の世の不条理は、簡単じゃないから解決もままならない。水戸黄門や大岡越前を見て育ったわたくし、複雑なまま理解し、思考展開する、そういう訓練をしてきていないので、この手の話は苦手な分、グサグサと刺さります。

自国領土を取り込もうとしている中国の行為は正当と認めてこそ、「だからと言って、国民をいたずらに傷つけたりする非道は止めよ」と抗議することが正当化されるという武田氏の話は、心に収まり良く、すとんと落ちてきました。(チベットやウィグル弾圧も同じことですね)

気に食わなくても事実は事実。
スタートを間違えると、話がどんどんかみ合わなくなるのは経験済み。

例えば、尖閣諸島への中国の領海侵犯。日本は中国の国家の主権を認めて侵さずにいるというのに、何故侵犯を繰り返すのか、これ以上日本の国家の主権を侵すなら、戦争も辞さないぞ!という展開が出来ないとしたら、世界的に賛同を得られない紛争になり、日本が悪者になる可能性もあります。

中国の主権は認める。

納得はしましたが、ああ、でも浅慮なわたくしは、それでも、香港が望まぬ共産主義へと取り込まれていくのが気の毒でなりません。

自国を振り返ると、日本だって何も考えずに暮らしているうちに、極左政権/極右政権になっちゃう可能性もあります。(極とついていたら、右も左も関係無し、暴力団と一緒だと思っておいて間違いなし。極端すぎて、他者の権利や思想や自由を認めないことにかけては一緒ですから。)

先日、都知事選がありましたが、SNSでリベラルとか保守とか、右左騒いでるの見るたび、どっちも行き過ぎたら同じく毒みたいなもんだと私は思うので、どっちか片方でいないと正義じゃないとかいうのは、半分削って無しということにしている気がしますし、中道でありたいと思っています。いいことはいい/悪い事は悪いと判断できるようになりたい。

そのためにも、気に食わなくても事実は事実と、基礎情報や経緯を、ちゃんと知る事が大事だなと思った次第。

 FujiMaiさんによる写真ACからの写真を使用