『フレディ・マーキュリーの恋 性と心のパラドックス』を読みました。
竹内久美子さんと言えば、私の中ではサイエンスエッセイの人。気軽に読めて、為になる。
実在する研究結果というエビデンス付きで展開される内容は「初めて聞いた!」という驚きがあり、竹内さんの個人的な考えや感想が織り込まれてクスクス笑えたり、読んで楽しい印象しかありません。
人も動物も「自分の遺伝子を残す」ために生きて行動しているという発想が、高校の生物レベルの知識で頭では理解できるのですが、実践的に自分がそうだとは実感できてなかったのですよね。竹内さんの本を読むと、ちょっと笑えるいろんなネタの後で、私も生き物であり遺伝子に何らかの影響を受けて行動しているのだろうなと思えるようになり、自分にも「いざとなったらそうなる運命」みたいなのがあるのだろうなと信じるようになりました。
ところで、タイトルを見て、未読と思っていたら、「同性愛の謎 なぜクラスに一人いるのか」の改訂版でした。でも読んでから随分経っていたから、初めて読むような気分で再読。やっぱり、本は何度か読み返してみると、新しい発見があります。
同性愛者は、自分の遺伝子を残せない組み合わせ。
だけど男性同性愛者は4%、女性同性愛者は2%、どの国や民族を調べても近い割合で生まれるのだそうです。1%を超えると、遺伝子発生的には意味があると解釈されるそうです。子孫を残せないのに決して減らず一定数生まれる意味は何なのだろうか、確かに不思議。
余談ですが、こういう研究は、今よりうんと宗教的に同性愛を禁止していた時代からあった事も驚きでした。人の研究欲というか、知ることへの貪欲さを感じます。(キリスト教やイスラム教など一神教のエリアは、古代は同性愛受容でも、布教の過程で差別が弾圧に変化し、存在否定、死刑に虐殺。)
女性のX遺伝子に同性愛遺伝子が載っかっていること、男性同性愛者が出る家系は女性血縁者が多産(遺伝子拡散できる「家系」)、同性愛者の脳は発達に特異な部分があり、何かの才能に秀でる可能性大。もしかすると、その才能で名声や財産を増やし、女性血縁者の子孫をバックアップするなど、ヘルパー的な存在として家系に役立つ存在になるかもね、などなど。実験内容も書かれていたから、そこからこの結論を導き出すのかと面白かったです。
今回読み直して『あ、そういうことだったのか!』という内容が、オキシトシンというホルモンの話。
美容室やマッサージ、人に触れられると気持ちいいなと思うわたくし。
理由がちゃんとあったのが分かって、スッキリです。
オキシトシンは、不安感が減り、心地よさや安心感が増すホルモンで、すべての哺乳類のオス、メス共に、同じ構造で存在するホルモン。
陣痛促進したり、母乳分泌を促したり、我が子への愛着を感じたり、親として認識したり、人と人の絆が増したり、痛みが減り治りが早まり、免疫力が上がる、魔法のようなホルモン。
オキシトシンは、人と人が触れ合う時にも分泌されるそうで、触れる側も触れられる側も分泌。低刺激でも分泌されるので、美容室やマッサージで気持ちよくなってウトウトするのはオキシトシンのせいなんですって。
だから、心や体が傷つき弱っている人の傍らで、手を握ったり、ただ抱きしめてあげることが助けになるそうです。
人は大人になると、体の接触は失礼になる場合が増えて避けるようになりますから、子供が母親に頭を撫でられるような、そんな気軽なオキシトシン・タイムが減りがちですよね。
美容室やマッサージ店がやたらと増えましたが、オキシトシン・タイムを無意識に求める、世の大人のニーズの発現のような気がしました。
内容、分量共に、さらっと読めるので、スキマ時間の読書におすすめです。
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