今日、久し振りに3万円を越える通販の注文が入りました。お一人の方が3万円を越える注文をされることは、当店では珍しいこと。
注文されている品物は、予約商品のみ。
備考欄に「急いでください」のひと言。
9月中旬入荷予定のお品があったので、これを急いで揃えることは無理がありますから、結果は早くお知らせした方が良かろうと思い、注文フォームに記載されていた携帯電話に電話いたしました。
その品物は、クナプラスのタテプリーツ(エコバッグ)
メーカーは、私のような小売店をたくさん相手にしている仕事ですから、
うちが注文殺到していたら、メーカーさんなんて、もっと殺到しています。
店主、最初に入社した会社が、某文具メーカーで、スチール家具を現場納品するための図面を引き、現場施工の管理をするのが仕事でした。私の時代は、まだ都庁を、羽田第2ターミナルなど大規模な公共施設がわさわさ施工されていた時期で、そりゃもう、残業代は貯まりますが、心と体がしんどい現場仕事が多い時代でした。
メーカーって、計画的に生産ラインを動かしていくから、生産効率が上がって、品質の確保も出来て、納期も守れるんだと、反面教師的に学んだものです。
同期で集まると出る笑い話に、朝までに組み立てなくちゃいけない現場で、夜の荷受け、何故かひとつだけ軽いダンボール、蓋を開けると「がんばったけど、ここまでしか作れませんでした、残りは明日の出荷になります、ごめんなさい」と工場の生産管理の担当氏の肉筆メモ。
職人さんは今夜だけだと思って無理を聞いて来てくれてるのに、明日また来いって、えーー!つか、お客様がそれでいいって言わないよねー、謝ってすまないよねー!私、今夜も現場立ち会いなんですかーーー!?他の仕事もあるんだけど、いつ図面ひけばいいのよー!などなど、走馬灯がグルグルです。
この経費は、工場に振ったら、営業と設計の部門は、一見利益が出ますが、工場の経費は膨らみますから、生産を生業としているメーカーとしては、ダメなパターンですよね。
生産計画を逸脱したら、工場も、物流も、営業も、設計も、施工も、現場も、みんなが無理をするしかない。その結果、納まってくれたらお客様だけは喜んでくれるでしょうけれど、往々にして、お客様もハラハラする納期遅れを引き起こしたり、ダメ工事が残ったりしますから、誰の得にもならないのが、メーカーの無理なんです。
これは、メーカーが特殊なのではなくて、ビジネス全般に言える話だなと思っております。ビジネスでは、しなくていい苦労の代償は、利益増よりも経費増に跳ね返るもの。「無理は、誰も得をしないように出来ているんだな」と、50年生きてきた人生経験上でも、それは普遍性のある内容だなと思っております。
戻って、冒頭の通販のお話。
正直、8月は売上げが少ない月。
心のどこかに「9月中まで待つのは多分1色っきりだから、それ以外の色は待ってくれたら売上げ助かるんだけどな~」と思う助平心がありましたが、お客様の要望は全色全数を同じタイミングで「急いで手に入れたい」のだから、そこに添えないなら引くべしと決めて、お客様に電話。
「今のメーカーの状態だと、A色は9月中旬まで待たないといけないから、他の取扱店に電話して(取扱店は数件しかないので大した労力でもない)、店頭在庫があるかどうかを聞いてみるといいですよ」とお伝えして、キャンセルに応じました。お客様は、よく分からないまま待つというストレスが減りますから、喜んでくださったと思います。
こんな風に「見切りをつける」ことが出来るようになるまで、何年掛かったことか…ひとりのお客様が満足するために、私に連なるたくさんの方を「急がせる」という無理の連鎖で疲れさせてしまったりもありました。自分も、間に合わせられるかなと、ヒヤヒヤした心持ちで疲れましたしね。
一見さんでも、常連さんでも、「ここは何とかしてあげるべき」と思える時には頑張りますが、そうでない時には「断る」という選択が、私の大事な施策です。
「○○をする/出来るようになる」というプラスオンの考え方は、小さい頃からそれがいいことだと教えられ、やらされてきたもので、目標をたてることは出来る人が多いですよね。(達成となると話が別になるんですけど、それは横に置いといて)
いい加減、いろいろ経験して出来ることや分かる事が増えてきたら、プラスし続けると飽和してきます。そうなったら、逆に「○○をしない/断る」という引き算思考が、人生スッキリ生きる秘訣になるなと感じております。人生の時間は有限なので、その時間で何をするのか、優先順位をつけて注力しないと、時間はいつも足りません。
何でもやろうとすると、大概、簡単に出来ることに手を掛けてしまうんじゃないでしょうか?達成感が薄い仕事をたくさんしても、慣れで刺激がなさすぎて、後で「私、何やって来たんだっけ?」と全部が薄味の成果に見えてしまい、落ち込むのが目に見えております。私はその傾向が強いので、近々やってくる50代の10年間は、意識して、他者・他社との分業を進めたいなと手帳にメモしているところです。
50代にもなると、残りの人生の時間を考え始めます。
できるだけ、たくさん、楽しい時間を過ごしたいので、そのためにも、「やらない」選択を意識しないとな~、と思うのです。
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「一期一会」「出会ったら買い時」が当店のキャッチフレーズ★
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