倣いたいと思うことに出会う幸せ

先日、取引先のTOMATO畑の田中社長にご協力いただき、新ブランド「横浜ウッド」店頭販売を開催。

田中さんは、私よりうんと若い方なのですが、言葉遣いが丁寧で語り口が熱心。彼の動きを見て、説明を聞いていると、自分とスタイルが違うので、非常に勉強になります。

 

私は、前職では高額商品を売る店舗企画やデザインに関わっておりました。時代の流行もあるかと思いますが、耐久消費財で高額の商品を買ってもらうために、「売らない営業」がもてはやされておりました。

高額商品を扱う業界は、どこもかしこも「敷居を下げること」に一生懸命だった頃。消費者も自分で情報を収集して、比較した結果、自分に合うものを選ぶ気風が強く、ゆえに企業側はいかに情報提供と情報開示を行うかが大事だった頃。

 

 

あれから10年以上も過ぎているというのに、「自分にとって心地よいやり方」という認識があるもので、あの頃から私の中身は変化していない模様。お恥ずかしい。

 

個人商店は、ひとりでやっていたら、出掛ける暇も作れなくなってくる忙しさですし、新しい情報は努めて追いかけないと、入って来にくい環境だと思います。

 

田中社長は目の前で全部見せて下さいますから、私のための研修会のようでした。

以下、私の備忘録も兼ねて、田中社長の接客の凄いところ一覧。

 

●来店した方が、TOMATO畑に興味がある/ないを観察する前に、話し掛ける。

 

●自分の名前を名乗り、何を作る会社かを短く説明

名前を名乗られると、お客様も聞く姿勢を示してくれます。

私はいつも「こんにちは」の挨拶はしますが、興味があるものが何かが分かるまでは、自由に見てもらうフリータイムと思っておりました。挨拶は、その後にしたい話題の端緒にはなりません。「こんにちは、今月の新商品は○○です、ご覧になって下さいね」ってお知らせをひとつ入れるだけで次のことへ移れます。

 

当たり前みたいな話ですが、これを出来るかどうかは別です。

私も知識としては知っていても、それが自分の店に合うのか判断してこれまでのスタイルできたのですが、それもたまには振り返って、継続すべきかどうか、見返しが必要かなと思いました。

 

●「今日は〇〇をお知らせしたくて来たんですけれど、聞いていただけますか?」

実は、田中社長の話したい情報量は、半端ない量なんです。私はそれを、取り引き前の商品説明の日に体験済み。5時間ぐらい喋り続けた田中さん(笑)帰る電車まだありますか?って言いながら別れましたもの。ほんとは全部話したいんだと思うんですが、まずはお客様の興味をひく「入口」を作るイメージ。話を聞いている様子を見ながら、次の話題を出していいのか判断し、「関連話題で知って欲しいことがある」と次の入口を開けていく。

 

この時点で、TOMATO畑に興味がなくても、話に引き込まれてもうちょっと知りたい、聞きたいと、お客様の方が心の準備をしてくれますから、一方的な説明が、だんだん会話になったりもします。

 

●お客様の話もよく聞く

一方的に人の話を聞き続けるのは、興味がある話題でもしんどいものです。これが双方向で意思疎通が出来ると、会話が盛り上がり、興味が次の話題を開いてくれます。お客様の話をよく聞くということは、お客様の興味の方向性や、予備知識のレベルを計る目安になりますから、お客様にもたくさん話してもらいます。

 

●表現のカスタマイズ

人それぞれ、理解しているものの名詞や用語があります。その方が使う言葉を聞いて、その方に分かり易いような言葉を選んだり、説明の順序を変えたりと、同じ情報なのですが、細かくカスタマイズした表現を心掛けているのが田中さんの凄いところ。情報の理解度が低いと、カスタマイズなんて出来ませんからね。

私も、店頭POPやHPの表現を工夫するために、商品にまつわる原材料の勉強をするために本を読んだり、辞書で言葉遣いを確認したり、地味に努力はしておりますが、発信元のメーカーには情報量と情報の精度で負けます(涙)それを専門として常に考えている方には叶いませんが、TOMATO畑は全て教えてくれますから、いい機会なので私もお勉強。

 

●チラシを渡す

話が十分に出来なかったとしても、その紙があれば、思い出してググってくれるかもしれません。その時は余裕がなくてスルーしたとしても、帰って落ち着けば、あれはどんな話だったのかな?とググってくれるかもしれません。そのためにも、HPの情報は充実させておかなくちゃなと思いました。

また、HPへ誘導するために、紙媒体を使うという古典的な手法も、地上から消え去らない間は有効手段と思って、活用する方向で。

 

ひとりでやっていると、自分にとっての当たり前ばかりになり、傍から見たら時代遅れで溺れ掛けてるのにも気付かずに消えてしまいそうですから、たまにこうやって「この人凄い!」「真似したい!」という相手に出会えることは幸運です。自分より先を歩く人が、自分の横に来て話してくれるなんて、私ぐらいの年になると、なかなか無いことなので、有り難いこと。

どこかの催事で、TOMATO畑の田中社長に直接接する機会がありましたら、私の書いたことを味わうべく、ぜひ田中社長の話に聞き入ってみて下さい(笑