動物の死は、かなしい?

旭川動物園で飼育員をされていた方で、現在は絵本作家の【あべ弘士】さんの著作。「14歳の世渡り術」というシリーズの一冊。

池上彰さんが著書の中で書かれておりますが、子どもに向けて大人の常識や大人の情報を説明することはとても難しいのは、大人なら納得ではないでしょうか?

(大人同士でも意思疎通が出来ない世の中ですからね。他者との共有の困難は、国や民族、老若男女を超えた人類の共通課題じゃないかと思います)

子ども時分から何が好きで、何に注力して、何を考えて、何を学んだか、平易な文章で綴られておりまして、若い魂の右往左往する感じがとても自然に書かれており、既に46歳の店主、「若いって爽やかよね~」と私より年上の方の文章なのに、若さを感じてクフクフ笑ってしまいました。

 

飼育員になる前に、「絵かきになりたい」と思っていたあべさんですが「自然を知ること」への興味も大きかったようで、それで飼育員の道を選びます。

この選択が、店主からすると平易ではない道に見えるのですが、本人は『強い興味に動かされて選ばざるを得なかった』ようで、そう描かれると、確かに私の中にもそういう人生の分岐点があったもので、あべさんも「人生の渦に巻き込まれたひとりなのだな」と、またもやクフクフ。

だって、そっちへ行くしかない流れにのっている人の物語は、楽しいのです。

とは言え、動物園の飼育員という仕事は、生と死に近い仕事なので、読んでいて切ないところも多々ありました。

店主はインテリア・デザイナーというカタカナ職につき、海外で働いておりましたが、文字面には現れない切ない出来事がた~くさんありました。お勤めしたことがある方なら、そういう見た目と違うしんどさって分かると思います。

そこがまた、その職業の喜びだったり楽しさにつながるところなんだと思うのですが、生と死に近いというと、やっぱり特別濃いのじゃないでしょうか?

あべさんは、自分のミスで死なせた動物の話を書いておりましたが、淡々と書かれている分、そこに至るまでの後悔など思うと、他人事ながら苦しく感じましたもの。

 

でも、でもね。
普通なら体験出来ないことを、飼育している動物の命だけじゃない、その命に対面する自分が命がけで対面して関わる体験ですから、しんどさを越えて、神聖な領域に踏み込むような思考が体験出来たのではないかと思います。

 

「命あるものが死ぬのは困ったことではなく”正しい”ことなのだ」この一文、とても強くてすっきりした意志を感じました。

死があると知ってこそ、生きていることの稀有を知り、今を頑張る気持ちがわきいでると店主は思います。この現実では、生あるものはいつか死ぬのは本当のこと。

元気だと、その時が想像しにくいですが、若かろうとも何が起こるか分からない世の中ですからね。いま、穏やかに多少不自由があろうとも、生きているなら、この時間は稀有。それを凄いことなんだなーって味わえたら、もっと幸せになるような気がしました。

「動物の死は悲しい?」というタイトル。

読後は、悲しいということよりも「美しくて尊い」と思いました。

思春期の方だけでなく、大人に読んでいただきたくなった1冊です。