漆のスプーン

漆のスプーンを使ったことがありますか?

私は漆のスプーンを使い始めてから金属のスプーンは冷たさや硬さ、カチカチ当たる音や味が金気臭い気がして使えなくなりました。そのくらい漆のスプーンは使い心地がいいものです。


曲線が多いスプーン木地。機械化しにくい形状ゆえ、今は9割方輸入木地に頼っております。(人件費の安い国で手作業)

おかげで廉価な商品が手に入るようになりましたが、今ひとつ手や口に馴染まないものが多いことが店主の不満でした。

木地の完成度が低いのです。人の体はそれほどサイズや機能的に差異は無いはずなんですが「形は確かにスプーンだけど…」が多過ぎるのです。木地を作っている側の意識が基本的な用途に使えればよしとしているんでしょう。

ちなみに、輸入木地を使う工房やメーカーさんでは、そのまんま使っているところもあれば、必ず日本の職人の手で調整かけてから使っているところもあり、同じ木地を使っていても出来はバラついています。

調整と言葉にすると簡単ですが、ようは機械仕事だけでは済まないので、手仕事で削ったり磨いたりと手間がとてもかかります。3次元曲線なので2次元直す簡単さとは訳が違うのです。

開業間もない頃、私の大学&会社の先輩だった桐本泰一さんから「ものを知らないままやって欲しいとごねたりして、塗師を困らすんじゃないぞ」と言われたことがありますが、今回の依頼は津軽塗・木村正人さんにとっては困った相談だったかもしれません。

安くて買いやすい値段で、かつ普段使って気持ちいい機能的な形のスプーンを小ロットで!という依頼。最初「う~ん、手間かかるんだよね~、1本ずつ作業しないといけないし、まとめて同じこと出来ない形だから、う~ん」と渋ったのですが受けて下さいました。


スプーンは平面的に表現しにくい形状なので、お椀のようにはいきませんで、元の木地を探すところで随分時間がかかり、木地を削ってもらっては口に入れてみたり手に持ってみたり、どこが当たるのどこが厚いのこの丸みは欲しいの…四の五の四の五の…と直してもらってにまたまた時間がかかりました。

(1年に1アイテムオリジナル作るってことは無理があるなと実感)

それにしても、木村正人さんは凄い方です。
私の感覚的な好き嫌いを雑多大量の断片的な情報からすくいあげて木地の調整で形にしてくれました。木地のプロトタイプが出来上がれば、そこからは木村さんの職人技にお任せで安心です。

納品されてきたスプーンを見て、「え?ここまで作りこんでくれたんだ!」と感激してしまいました。木地プロトタイプよりも形状の完成度が高い上に、仕上げも手を掛けて私が思っていた以上のグレードで仕上がって来まして…

 

ちょっと、支払いが怖くなったのは正直な話(笑


本日から店頭に並んで皆さまをお待ちしておりますので、ご興味を持っていただけた方はどうぞ店頭で実物をご確認下さい!

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