硯箱の製作過程~前書き

店主は前職でデザイナーをやっておりました。ひどい会社で(笑)、専門外のこともたくさんやらされる会社でしたから、気が付けば手広くいろいろ知識や技術が蓄積され、いま個人商店の運営に随分役に立っております。

 

2年目からは、もっとこのキャリアを前面に押し出して店の個性を出していこうと考えております。

 

具体的に何をどうするのかというと、工芸の作り手と使い手(お客様)の中継点となることです。地理的な問題で顔を合わせて相談出来ないと、何かと不都合なことが起こります。そもそも、知り合えないです。

 

知り合えたとしても、自分の欲しいものを上手に伝えられる方はいいですが、そういうことが苦手な方もいらっしゃいます。「こんな感じ」という程度の表現でモノは作れませんから、そこを私が言葉やデータを補って作れるように翻訳したいと考えております。

 

作る側には、出来るだけ仕様をFIXした状態で発注を致しますから、少々手間が省けるところがあるかもしれません。または、こんなニーズがあったのかと発見の一助になるかもしれません。

 

ちょっと話が飛びますが、私はメタボではありませんがメタボ体型です。20代半ばに病気をきっかけに10キロ太ったのですが、体調は戻ってもなかなか痩せませんで今に至ります。

 

着飾りたい若い時に既にデブでしたから、みんなの着ている流行のお洋服が私には壊滅的に似合わず、心の奥底で悲しい思いを貯めこんできました。そもそも、私の体型に合うファッションや自分の個性に合うテイストが全くもって分かっておりませんでした。

 

30代半ばで「太っているのが私の個性」と吹っ切れた時に、着られない服への興味が嘘のように消え去り、自分に似合う洋服に目が行くようになり、徐々に自信も取り戻せたし元気で楽しいという感覚を思い出した経験があります。10年も掛かりましたが気づけて良かったと言えましょう。

 

そんな訳で、モノに自分を合わせるよりは、自分に合うモノを所有して使いたいと考えるので、同じような発想の方のお手伝いをしていきたいのです。

 

ということで、最近依頼された『硯箱』の製作で事例紹介したいと思います。漆器なので約4ヶ月ほど掛かる予定です。ポイントとなるところでぽつりぽつりと記事をUP致しますのでお楽しみに。