お店で使っているお茶出し用の漆カップの底がひび割れてきました。ひびの原因は私もすぐ思い当たりました。そもそもが、完成後のオープンタイムが短すぎたのです。
開業して真っ先にやってみたかったことが『漆のカップで熱い飲み物を飲んでいただく』こと。特に、普段使ったことの無い若い方へ知っていただきたいと思っていたので、店に納品されて1ヶ月は置いておいたのですが、堪え性がないので使い始めた訳です。
漆カップの試飲は、普段陶磁器のカップを当たり前に使ってきた方々に、漆のしっとりした肌触りや柔らかな口当たりだけでなく、木や竹にカップも軽くて熱さがマイルドに伝わってきて、中々いいものだなという気付きの一助になりましたから、やって良かったと思っています。
でもそのせいで、早く痛めてしまった模様。
塗ってくれた津軽塗・木村正人さんへ画像を送信してお伺い。私は使うしか能がないので、気になることが起こったら、お勉強の機会とばかりに木村さんに教えてもらうのです。
こぶ茶を混ぜるためにプラスチックの使い捨てマドラーを使っていたのですが、柔らかいものだからとカツカツ衝撃を与え続けたのが災いしているのではなかろうかということでした。
乾いていますが、締まるまで、やはり時間を置いてあげなくちゃいけなかったんですね。
それにしても、黒い方のカップだけひび割れているのが私には不思議でした。お客様へのお茶出しには赤いカップを優先的に使い、黒いカップは自分用に多用しておりました。
ちょっと予想はしていましたが、赤と黒では顔料など含有する成分に違いがあるので差が出たということが分かりました。赤の場合、赤い顔料を混ぜる訳ですが、コンクリート(漆)に砂利や砂(顔料)を混ぜて強度を上げるようなイメージ。
いま、黒ちゃんは弘前へ旅立ち、木村さんのところで修理中です。今回、元々と同じように塗り直すのではなくて、塗膜を薄く仕上げてもらうことにしました。
塗膜厚が薄ければ、下地と密着していれば、剥離もしにくいという考え方です。木村さんの話を聞いていて、ああそうかと思い、試してみたくて仕上げの変更をしてもらうことにしたのです。
早く、黒ちゃん帰ってこないかな。毎日使っている食器ですから愛着がわいているので、手元にないと寂しいです。
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