左:私が1年使ったお椀 右:お店にある塗立てのお椀(未使用)
艶の違いがはっきり写っていると思います。元は左も右と同様、艶がない塗立ての表面でした。
私ぐらいの年になると、時間の経過は「加齢」とか「老化」とか、イメージの思わしくない言葉に結びつきがちですが、漆は使う時間が増すごとに『美しく』変化していきます。
艶もそうですし、漆が透けてきて重ね塗りした色が出てきたり、私限定かもしれませんが、感触もしっとり感が増すと思います。
私の尊敬する高森寛子さんのギャラリーで、伏見眞樹さんにお会いする機会があったのですが、3人で漆の艶について会話したことを思い出します。
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高森さんの普段使いしている漆器は、どれもピッカピカの艶をまとっているそうです。高森さん曰く、特に気を使っている訳ではないのに傷は付けない方だし、使って洗って始末するのが面倒と思わない方だから気軽に何かと使うので気付けば艶が出てきていて…
伏見さんの企画展だったので、そこには高森さんがお使いの伏見さん作スプーンも展示されていたのですが、確かに鏡面仕上げをしたようにつるつると光っておりました。
高森さんの手は、漆に光を与える手なのでしょう。私は逆で、あまり光らない手のようです。画像のお椀も、1年経ってももやっと光る程度。高森ハンドはとても羨ましいのですが、自分で使って出てきたかすかな艶も嫌いではありません。
伏見さんが、「艶が出始めた頃の漆は、真珠の表面のような奥行きのある艶感があって、あれはあれで美しいですね。」とおっしゃったのを聞いて、私も真珠のような艶だなと思っていたので、共感出来てとても嬉しかったのを思い出します。
いつか、高森さんの器のような美しい艶が出るといいなと思い、毎日このお椀でお味噌汁をのんでおります。
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木村富美子 (水曜日, 16 5月 2012 08:45)
一緒に年を重ねると愛着が湧きますよね。
しみじみとお椀を眺め触り、そして自然と漆の底から艶がでる。
このゆったり流れる時間が心地良いです。
うちで20年使っているお椀、可愛くて仕方がありません。
店主 (木曜日, 17 5月 2012 18:22)
木村家の紋紗のおやつ入れのお椀、私も可愛くて仕方ありません。飽きてきたら、いつでも私がもらいますから、誰よりも最初に声かけて下さい!なーんちゃって。(かなり本気)
木村富美子 (木曜日, 17 5月 2012 19:26)
飽きまへん、あきまへんがな!